このコーナーでは、今話題のキーワードの時事英単語や、英文を読む上で必須の頻出基本単語などをイラスト入りQ&Aのイメトレ(イメージトレーニング)方式で楽しく、そして覚えやすく紹介・解説をします。
解説・監修は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サムさん。
A:"My fellow citizens"の
(1)直訳は「私の仲間の市民たちよ」
(2)意訳は「国民のみなさん」
「citizen = 市民」とだけ丸暗記していると、正確な意味を把握できません。日本語の「横浜市民」というときとはニュアンスがずれます。
■ My fellow citizensをイメージで表示してみると:
My fellow citizensのMyはBarack Obamaさん。
fellowは「仲間」「同僚」。
citizenは、
cityから派生していて「市民」と訳されます。「市の住民」という意味での「市民」として使うこともありますが、多くのケースは「市民社会」という政治的ニュアンスでの「市民」です。あるいは「公民(権を持つ人)」。実際には多くの場合で「国民」が文脈に合います。
大統領就任演説では国民に呼びかけるので、「国民のみなさん」が自然な訳でしょう。
訳例:
the citizens of Paris パリ市民
the citizens of Japan 日本国民
citizenは、国から権利を保障されますが、国に対する義務も持ちます。
表現例:the rights and obligations of citizens(市民の権利と義務)
18世紀末、フランス革命では、国民たちが立ち上がり、国王を処刑して革命政府を打ちたてました。国民たちが手に武器を持ち、血を流して権利を勝ち取ったのです。このフランス革命のときの(仏語の)citoyenのイメージが、英語のcitizenにも流れ込んでいます。
オバマさんが呼びかけた、
My fellow citizens = My fellow Americans
です。どちらも使われます。
オバマ大統領は、演説のクライマックスで国民に自発的な義務履行を求めました。このため、My fellow Americans よりもMy fellow citizensと呼びかけることで、「皆さんには義務がある」ことを示唆したものです。この意味では、「市民」と直訳しても含蓄があるでしょう。
■ オバマ大統領就任演説冒頭(2009年1月20日):
My fellow citizens:
I stand here today
humbled by the task before us,
grateful for the trust you have bestowed,
mindful of the sacrifices borne by our ancestors.
I thank President Bush for his service to our nation,
as well as the generosity and cooperation
he has shown throughout this transition.
伊藤サム(Sam Ito)
父親は米国サンフランシスコ生まれの日系二世。米国(高校)、英国(ロンドン大学)に留学。一橋大学在学中に英検1級で合格者総代。
ジャパンタイムズ在職中は、報道部にて外務省、大蔵省、首相官邸、自民党などを担当。週刊 ST 編集長、外信整理部長、編集局長などを歴任。その間、英 BBC などにコメンテーターとして出演、雑誌などへの寄稿も多数あり、多様なメディアにかかわるバイリンガル・ジャーナリストとして活躍。2009年NHK講座『ニュースで英会話』講師。
著書に『第一線の記者が教えるネイティブに通じる英語の書き方』『第一線の記者が教える英字新聞の読み方』『伊藤サムのこれであなたも英文記者』、解説・監修に『ニュースダイジェスト ビギナーズ』(以上、ジャパンタイムズ)など。
ウェブサイト「英語の世界」:
http://homepage1.nifty.com/samito/