単語イメトレ
このコーナーでは、今話題のキーワードの時事英単語や、英文を読む上で必須の頻出基本単語などをイラスト入りQ&Aのイメトレ(イメージトレーニング)方式で楽しく、そして覚えやすく紹介・解説をします。 解説・監修は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サムさん。

※隔週で2~4単語ほどを掲載。
※トップページでは各Quizはランダムに表示されます。ぜひ何度もアクセスして全部のQuizに答えてみてください。
Q:「スチュワーデス」を「客室乗務員」と言い換えることに代表される、差別的な言動を避ける動きのことを英語で何と言いますか?

A:広い意味では、(being) politically correct (略してPC)。個別的にはgender-neutral language(性別について中立な言葉)の使用など。



National Organization for Women (NOW)は、1966年に米国で設立されたfeminists(男女同権主義者たち)の団体。女性解放運動で大きな成果をあげました。


男女差別(sexism)や人種差別(racism)などを避ける動きには、米国などで1960年代から70年代に大きなピークがありました。差別的用語を言い換えるなど、差別的言動・偏見を避けていることを(being) politically correct(「政治的に正しい」)と呼ぶようになりました。


典型的には、男女の役割の固定観念(stereotype)を助長する用語の言い換えがあります。
stewardess → flight attendant(客室乗務員)
fireman   → firefighter(消防士)
firemanという言葉を使うこと自体が、「これは男性の仕事だ」という意識を広めるので、firefighterのように男女の区別がない言葉、つまりgender-neutral languageを使いましょう、ということです。
日本語でも、スチュワーデスは「客室乗務員」と言い換えられ、看護婦さんは「看護師」となりました。


1970年代などにさまざまな非差別用語が開発され、定着したものは現代では常識となっています。


その反面、「あの時代はカリカリしていて行き過ぎがあった。あれほど神経質になることはないよ」と感じる人たちもたくさんいます。
例えば、chairman(委員長、会長)という言葉の代わりに、男女の区別がないchairpersonやchairを使うことが提案されましたが、完全には普及していません。chairperson / chairを好む人たちもいますし、今でも堂々とchairmanというタイトルを使う大企業はたくさんあります(女性であればchairwomanが普通)。


差別的言動を避けることを、一般に(being) politically correctと言います。
名詞形はpolitical correctnessです。どちらも略してPCです。
ただし、political correctnessはPC運動の行き過ぎを皮肉る批判的文脈で使われます。PC運動に対する蔑称に近いです。
PCはあまりにも意味が広く、皮肉にも聞こえるので、PC推進者たちは具体的に「gender-neutral languageを使いましょう」などと言うことを好みます。


例文:Political correctness is leading to an erosion of free speech in this country.
(「政治的に正しいこと」の行き過ぎで、この国での言論の自由は萎縮しつつある)


※イラスト・写真の一部にマイクロソフト社などのクリップアート類を許諾条件に基づいて使用しています バックナンバー
伊藤サム(Sam Ito)
父親は米国サンフランシスコ生まれの日系二世。米国(高校)、英国(ロンドン大学)に留学。一橋大学在学中に英検1級で合格者総代。
ジャパンタイムズ在職中は、報道部にて外務省、大蔵省、首相官邸、自民党などを担当。週刊 ST 編集長、外信整理部長、編集局長などを歴任。その間、英 BBC などにコメンテーターとして出演、雑誌などへの寄稿も多数あり、多様なメディアにかかわるバイリンガル・ジャーナリストとして活躍。2009年NHK講座『ニュースで英会話』講師。
著書に『第一線の記者が教えるネイティブに通じる英語の書き方』『第一線の記者が教える英字新聞の読み方』『伊藤サムのこれであなたも英文記者』、解説・監修に『ニュースダイジェスト ビギナーズ』(以上、ジャパンタイムズ)など。
ウェブサイト「英語の世界」:http://homepage1.nifty.com/samito/