単語イメトレ
このコーナーでは、今話題のキーワードの時事英単語や、英文を読む上で必須の頻出基本単語などをイラスト入りQ&Aのイメトレ(イメージトレーニング)方式で楽しく、そして覚えやすく紹介・解説をします。 解説・監修は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サムさん。

※隔週で2~4単語ほどを掲載。
※トップページでは各Quizはランダムに表示されます。ぜひ何度もアクセスして全部のQuizに答えてみてください。
Q:「協力」とcooperationのニュアンスはどう違いますか?

A:cooperationは、相手に犠牲を要求する重い語である場合もあります。


日本語では多くの場面で「協力するのは当たり前のこと」というニュアンスが伴います。「ご協力をお願いします」という言葉は、必ずしもキツイ言葉ではありません。

これに対して英米文化圏では、集団ではなく個人をまず尊重するので、cooperateには「個人は犠牲にされてしまう」というニュアンスもあります。もちろん基本的には美徳ですが。

「ご協力ありがとうございます」として、Thank you for your cooperation.(イヤでも協力してくれてありがとう)とあまり何度も言うと、相手は、自分が犠牲になっていることを何度もリマインドされている気分です。

年賀状での「今年もよろしくお願いします」は単なるあいさつですが、これを"I'd appreciate your further cooperation in the New Year."と訳すとキツイです。「新年はもしイヤであってもさらにご協力してもらえるとありがたい」という負担依頼に聞こえます。

日本語でも強いニュアンスで使われることがあります:自動車が検問で止められたとき、警察官の「ご協力をお願いします(これから車内を調べさせてください)」

なお、cooperateの co- = together です。
cooperate = work together です。


■オバマ大統領就任演説より(2009年1月20日):


冒頭で、政権移行というイヤな作業なのにブッシュ前大統領が気持ちよく手伝ってくれたことへ感謝します。
I thank President Bush for his service to our nation -- as well as the generosity and cooperation he has shown throughout this transition.
ブッシュ大統領に、彼のわが国への奉仕、さらにこの政権移行の間中ずっと彼が示してきている寛容と協力に感謝いたします。

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そして、イヤでもやらなくてはならないこと、という重いニュアンスでcooperationが登場します。
We are the keepers of this legacy. Guided by these principles once more we can meet those new threats that demand even greater effort, even greater cooperation and understanding between nations.


※イラスト・写真の一部にマイクロソフト社などのクリップアート類を許諾条件に基づいて使用しています バックナンバー
伊藤サム(Sam Ito)
父親は米国サンフランシスコ生まれの日系二世。米国(高校)、英国(ロンドン大学)に留学。一橋大学在学中に英検1級で合格者総代。
ジャパンタイムズ在職中は、報道部にて外務省、大蔵省、首相官邸、自民党などを担当。週刊 ST 編集長、外信整理部長、編集局長などを歴任。その間、英 BBC などにコメンテーターとして出演、雑誌などへの寄稿も多数あり、多様なメディアにかかわるバイリンガル・ジャーナリストとして活躍。2009年NHK講座『ニュースで英会話』講師。
著書に『第一線の記者が教えるネイティブに通じる英語の書き方』『第一線の記者が教える英字新聞の読み方』『伊藤サムのこれであなたも英文記者』、解説・監修に『ニュースダイジェスト ビギナーズ』(以上、ジャパンタイムズ)など。
ウェブサイト「英語の世界」:http://homepage1.nifty.com/samito/