単語イメトレ
このコーナーでは、今話題のキーワードの時事英単語や、英文を読む上で必須の頻出基本単語などをイラスト入りQ&Aのイメトレ(イメージトレーニング)方式で楽しく、そして覚えやすく紹介・解説をします。 解説・監修は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サムさん。

※隔週で2~4単語ほどを掲載。
※トップページでは各Quizはランダムに表示されます。ぜひ何度もアクセスして全部のQuizに答えてみてください。
Q: commitmentとは、どんなイメージですか? 日本語にはない概念なので「コミットメント」とそのまま訳されることも多いですが、ジェスチャーで表現してください。

 A:「決意」。何かを「やる!」と固く決意するイメージ。人がcommitment(決意)をしたときは、こぶしをかたく握るジェスチャーがよく見られる






commitmentの訳語は「約束、公約、献身、傾倒、義務、責任、関わり、投入、委託、収容」など。文脈によって日本語ではいろいろな訳語となり、その実体をとらえにくいですが、中心的な概念は「決意」です。簡単に言えば、

「やる!」

ということでしょう。両こぶしを握って決意するイメージです。何かに「責任を持って取り組むと決意(して約束する・実行)すること」です。




■commit

まず、元になっている単語commitについては別項でイメージを解説しています。復習すると、ある状態に「送り込む」(carry)という原義から、次のような意味になります。
commit someone to prison 刑務所に送り込む →訳語としては、刑務所に「収容する」「投獄する」
commit something to memory 記憶の中に送り込む →記憶する
commit oneself to ... 自分自身を~する状態へ送り込む → ~する決意だ、~することに献身する、~することを約束する、自分の義務とする
commit murder 殺人(してしまった状態に自らを)送り込む →殺人を犯す




■commitment

commitの名詞形がcommitmentです。「commitすること・したこと」がcommitmentの意味ということになります。特に、I am committed to do this.(これをする決意だ、やるぞ) というときの主体的な「決意」「やる!」が、commitmentの意味の中核となっています。

「やる!」を3つの側面に分けて説明すると、
1) 「やる!」と自分の心の中で決意した場合 →訳語としては「決意」「決心」「覚悟」「義務」

2) 「やる!」決意を他人に表明した場合 →「(~するという固い)約束」「必達を約束(して自らを縛りつけること)」「(政治家の)公約」「確約」「言質」「(約束したことを実行する)責任」「やる気」「コミットメント」「(予算・労力などを)投入(するという約束)」「(結婚などの)約束」
まわりの人に必達を約束できるくらいに裏表がない固い決意がcommitmentです。このことから「約束」という意味にもなります。promiseより、はるかに強い決意に基づく約束です。

3) 「やる!」という決意を実行しつつある場合 →「献身」「ひたむきさ」「本気」「真剣な取り組み」「参加」「責任」「関与」「コミットメント」
そのほかに、commit(送り込む)から直接間接にきている意味に、次のようなものがあります。

4) 「投獄」「引渡し」「(委員会への)付託、委任」「(罪の)遂行、犯行」



■commitmentの使用例

commitmentはカッコいい響きなので、政治家に好まれます。日本の政治家も「決意」という言葉をよく使いますね。
以下はアメリカのオバマ大統領が使用した例です。

●2011年の年頭演説で景気回復を約束
"Our most important task now is to keep that recovery going. As President, that's my commitment to you: to do everything I can to make sure our economy is growing, creating jobs, and strengthening our middle class. That's my resolution for the coming year."
「約束」や「責任」と訳せるでしょう。

●2010年11月の横浜の大統領会見でのコメント。日米首脳会談で、同盟深化で一致
"The commitment of the United States to the defense of Japan is unshakable. Our alliances, bases, and forward presence are essential not only to Japan's security but, as Prime Minister noted, they help us ensure stability and address regional challenges across Northeast Asia.”
「関与」や「責任」と訳せるでしょう。首相官邸のウェブサイトではそのまま「コミットメント」と訳されています。

●2010年8月に大統領がイラク戦闘終結を宣言した演説より
“Our combat mission is ending, but our commitment to Iraq's future is not.”
「関与」や「責任」と訳せるでしょう。

●2009年4月にプラハで核廃絶を訴えた演説より
"As a nuclear power – as the only nuclear power to have used a nuclear weapon – the United States has a moral responsibility to act. We cannot succeed in this endeavor alone, but we can lead it, we can start it. So today, I state clearly and with conviction America's commitment to seek the peace and security of a world without nuclear weapons."
「(アメリカの)決意」と訳すとベスト。「約束」「責任」(responsibility)、「義務」(duty)とも訳せるでしょう。




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伊藤サム(Sam Ito)
父親は米国サンフランシスコ生まれの日系二世。米国(高校)、英国(ロンドン大学)に留学。一橋大学在学中に英検1級で合格者総代。
ジャパンタイムズ在職中は、報道部にて外務省、大蔵省、首相官邸、自民党などを担当。週刊 ST 編集長、外信整理部長、編集局長などを歴任。その間、英 BBC などにコメンテーターとして出演、雑誌などへの寄稿も多数あり、多様なメディアにかかわるバイリンガル・ジャーナリストとして活躍。2009年NHK講座『ニュースで英会話』講師。
著書に『第一線の記者が教えるネイティブに通じる英語の書き方』『第一線の記者が教える英字新聞の読み方』『伊藤サムのこれであなたも英文記者』、解説・監修に『ニュースダイジェスト ビギナーズ』(以上、ジャパンタイムズ)など。
ウェブサイト「英語の世界」:http://homepage1.nifty.com/samito/