このコーナーでは、今話題のキーワードの時事英単語や、英文を読む上で必須の頻出基本単語などをイラスト入りQ&Aのイメトレ(イメージトレーニング)方式で楽しく、そして覚えやすく紹介・解説をします。
解説・監修は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サムさん。
A:「有機的」はorganic。炭素を含む物質であることだが、ほかにも「有機栽培の」などの意味がある。
■例文
An American and two Japanese scientists have won the 2010 Nobel Prize in Chemistry for developing a process called "palladium-catalyzed cross coupling in
organic synthesis."
(アメリカの科学者と日本の2人の科学者が、2010年ノーベル化学賞を受賞した。受賞理由は「
有機合成におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリング」というプロセスを開発したことだ)
2種類の有機化合物を独自の手法で結合させるのがcross coupling。パラジウムという金属を触媒にすることで効率的に結合させることができるようになったそうです。
■organicとは
I’m organic, too.
organicは、「有機の」「有機体の」「生物から生じる」「臓器の」「オーガニック農法の」「無農薬の」など広い意味を持っています。
単純に言いますと、有機化学(organic chemistry)でのorganicとは「
炭素を含む物質である」こと。オーガニック野菜という場合のorganicは「
有機肥料を使って栽培した」ということ。
どちらも、organicのもともとの意味である「
動植物に由来する(物質)」に関連しています。
まず、(化学肥料ではなく)動植物に由来する肥料を使って育てたものがorganic vegetables(オーガニック野菜、有機野菜)です。
また、動植物に由来する物質はすべて炭素を含みます。
昔は、「有機化学」とは「動植物に由来する(= organicな)物質についての化学」という定義でした。しかし1828年に尿素などの有機物を人工的に作ることも可能と判明。有機物には炭素が共通して含まれることから、「炭素を含む物質についての化学」という定義に変えられました。この歴史的経緯から、有機化学の「有機」とは要するに「炭素」を指すことになったようです。
なお、有機化学の反対は、無機化学(inorganic chemistry)。「有機体」は(living) organismで、生活
機能を
有する存在、つまり微生物を含むいろいろな「生物」「動植物」。
organicとは、「organism(有機体=生物=炭素ベース)関連の」、あるいは「organ(
臓器)の」です。
organize(組織する)やorganization(組織)という言葉からわかるように、各部分が連携して機能を果たす「有機体」のニュアンスがorganやorganicにはあります。
なお「臓器」は、より正確にはbodily organ(体の器官)。organの原義は「道具」、つまりtoolやinstrumentということ。教会に必要な道具ということから、organには「(パイプ)オルガン」という意味もできました。
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伊藤サム(Sam Ito)
父親は米国サンフランシスコ生まれの日系二世。米国(高校)、英国(ロンドン大学)に留学。一橋大学在学中に英検1級で合格者総代。
ジャパンタイムズ在職中は、報道部にて外務省、大蔵省、首相官邸、自民党などを担当。週刊 ST 編集長、外信整理部長、編集局長などを歴任。その間、英 BBC などにコメンテーターとして出演、雑誌などへの寄稿も多数あり、多様なメディアにかかわるバイリンガル・ジャーナリストとして活躍。2009年NHK講座『ニュースで英会話』講師。
著書に『第一線の記者が教えるネイティブに通じる英語の書き方』『第一線の記者が教える英字新聞の読み方』『伊藤サムのこれであなたも英文記者』、解説・監修に『ニュースダイジェスト ビギナーズ』(以上、ジャパンタイムズ)など。
ウェブサイト「英語の世界」:
http://homepage1.nifty.com/samito/