単語イメトレ
このコーナーでは、今話題のキーワードの時事英単語や、英文を読む上で必須の頻出基本単語などをイラスト入りQ&Aのイメトレ(イメージトレーニング)方式で楽しく、そして覚えやすく紹介・解説をします。 解説・監修は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サムさん。

※隔週で2~4単語ほどを掲載。
※トップページでは各Quizはランダムに表示されます。ぜひ何度もアクセスして全部のQuizに答えてみてください。
Q:「チャレンジ」とchallengeはどう違いますか?
オバマ米大統領の就任演説では "Today I say to you that the challenges we face are real." などと使われています。

A:「チャレンジ」よりもchallengeの方がより困難な「挑戦」に使われます。

challengeは「難問」「困難な課題」と訳されることが多いです。




challengeは動詞では「挑戦する」。名詞では、「挑戦」という重々しい言葉にふさわしいほどに「困難なこと」。日本語の「チャレンジする」より、はるかに語感が重く、危険で不可能に近いことに使います。

日本語の「チャレンジする(挑戦する)」は、難しいことを「やってみる」ということなので、tryが相当することが多いでしょう。

challengeのもともとの意味は、中世のお城で警備兵が怪しい者を見つけて"Halt! Who goes there!"(止まれ! そこで歩いている者は名を名乗れ!)と大声で高圧的に「誰何(すいか)する」ことでした。

相手に挑戦的態度で、「お前はこの城のものではない! 違う! 違わないなら証明してみせろ! できないなら殺すぞ」と挑むことで、相手が敵兵ならば戦闘になります。

このおっかない要求から派生して、相手の主張が「間違っているぞ!と強烈な疑問を呈し、証明せよと要求する」「(相手の主張に)真っ向から反対する」 → 相手は真のチャンピオンとは違うとして「決闘や試合を要求する」「挑戦する」 → そのように「(挑戦しがいがある)難しいこと」と意味が広がってきました。

動詞として共通する概念は、「違う!」「反対!」と挑戦すること。例: She challenged him.(<議論などで>彼女は彼に反対した)。


■ オバマ大統領就任演説より(2009年1月20日): 

Today I say to you
that the challenges we face are real.
They are serious and they are many.
They will not be met easily or in a short span of time.
But know this, America — they will be met.
On this day,
we gather because we have chosen hope over fear,
unity of purpose over conflict and discord.
On this day,
we come to proclaim
an end to the petty grievances and false promises,
the recriminations and worn-out dogmas,
that for far too long have strangled our politics.
----中略------
. . . there is nothing
so satisfying to the spirit,
so defining of our character,
than giving our all to a difficult task.

a challenge = a difficult task となります。


※イラスト・写真の一部にマイクロソフト社などのクリップアート類を許諾条件に基づいて使用しています バックナンバー
伊藤サム(Sam Ito)
父親は米国サンフランシスコ生まれの日系二世。米国(高校)、英国(ロンドン大学)に留学。一橋大学在学中に英検1級で合格者総代。
ジャパンタイムズ在職中は、報道部にて外務省、大蔵省、首相官邸、自民党などを担当。週刊 ST 編集長、外信整理部長、編集局長などを歴任。その間、英 BBC などにコメンテーターとして出演、雑誌などへの寄稿も多数あり、多様なメディアにかかわるバイリンガル・ジャーナリストとして活躍。2009年NHK講座『ニュースで英会話』講師。
著書に『第一線の記者が教えるネイティブに通じる英語の書き方』『第一線の記者が教える英字新聞の読み方』『伊藤サムのこれであなたも英文記者』、解説・監修に『ニュースダイジェスト ビギナーズ』(以上、ジャパンタイムズ)など。
ウェブサイト「英語の世界」:http://homepage1.nifty.com/samito/