このコーナーでは、今話題のキーワードの時事英単語や、英文を読む上で必須の頻出基本単語などをイラスト入りQ&Aのイメトレ(イメージトレーニング)方式で楽しく、そして覚えやすく紹介・解説をします。
解説・監修は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サムさん。
A:commitとは、「送り込む」こと。
commit a person to prisonとは、「人を刑務所へ送り込む」。意訳すると「人を刑務所に収容する」)
commit a poet to memoryとは、「詩を記憶へ送り込む」。意訳すると「詩を覚える、暗記する」となります。
commit、そして名詞形のcommitmentは、日本語話者にとっても、ネイティブにとっても全体像の理解が困難な単語です。
日本語では、うまく対応する定訳がないため辞書にはさまざまな訳語が並んでいます。
次のような訳語があります:
・(罪)を犯す、(悪いこと)をする
・(人を施設に)送る・収容する・引き渡す、(軍隊)を派遣する・送る・投入する
・(人に~することを)約束させる、求める、義務づける。(be committed toで) 本気で取り組む、深く関わる
・(時間や資金)を用いる、割く(さく)
・~を委託する、ゆだねる
含蓄が多いために、ネイティブにとっても意味をつかみづらい単語です。英英辞典を見ても、並んでいるいろいろな語義の間には一見、関連がなく、全体像をつかみづらいのです。
このcommitの理解に挑戦しましょう。
語源的に、commitには「(しっかりと)送り込む」という意味があります。com-の部分はtogetherということで、mitの部分はsend / deliver / carryという意味です。
commitの全体像をとらえるポイントは、いろいろな意味の根源にある「送り込む」として理解することです。以下、具体的にみていきましょう。
commitには、いろいろな訳語があります。
・commit a person to prison (人を刑務所に収容する)
・commit a poem to memory(詩を暗記する)
・commit murder(殺人をする)
・commit suicide(自殺をする)
・I have committed myself to raising my child alone.(子供を一人で育てることにに決めた)
これらの表現は、すべて「送り込む」イメージで説明できます。
commit oneself to ~は「(引っ込みのつかない)約束をする」「~をきちんとやる」などと訳されます。
I have committed myself to raising my child alone.とは、「子供を一人で育てるこ
ということの中へ私は自分自身を送り込んだ」。つまり、「子供を一人で育てることを決心した」です。
自動詞としてのcommitは、
commit (自動詞) = commit oneself to (自分を何らかの状態に送り込む)と考えることができます。
commit murder(殺人を犯す)とは、「殺人(ということの中)に自分自身を送り込んだ」ということです。つまりここでは、commit = do という意味になります。
関連語をみましょう。
committee(委員会)の原意は「法案をcommitされた会」です。議会は、法案を審議する際に、まずは少人数のグループへ送り込んで深く議論してもらいます。送り込まれた(委託された)グループのことをcommitteeと呼ぶようになりました。
committeeが「委員会」と訳されるようになりましたが、「(法案を)委(託された人)員(による)会(合)」ということでしょう。
commissionも同様の意味です。
伊藤サム(Sam Ito)
父親は米国サンフランシスコ生まれの日系二世。米国(高校)、英国(ロンドン大学)に留学。一橋大学在学中に英検1級で合格者総代。
ジャパンタイムズ在職中は、報道部にて外務省、大蔵省、首相官邸、自民党などを担当。週刊 ST 編集長、外信整理部長、編集局長などを歴任。その間、英 BBC などにコメンテーターとして出演、雑誌などへの寄稿も多数あり、多様なメディアにかかわるバイリンガル・ジャーナリストとして活躍。2009年NHK講座『ニュースで英会話』講師。
著書に『第一線の記者が教えるネイティブに通じる英語の書き方』『第一線の記者が教える英字新聞の読み方』『伊藤サムのこれであなたも英文記者』、解説・監修に『ニュースダイジェスト ビギナーズ』(以上、ジャパンタイムズ)など。
ウェブサイト「英語の世界」:
http://homepage1.nifty.com/samito/