単語イメトレ
このコーナーでは、今話題のキーワードの時事英単語や、英文を読む上で必須の頻出基本単語などをイラスト入りQ&Aのイメトレ(イメージトレーニング)方式で楽しく、そして覚えやすく紹介・解説をします。 解説・監修は元ジャパンタイムズ編集局長の伊藤サムさん。

※隔週で2~4単語ほどを掲載。
※トップページでは各Quizはランダムに表示されます。ぜひ何度もアクセスして全部のQuizに答えてみてください。
Q:下記はオバマ米大統領就任演説の一節です。
". . . all are equal, all are free, and all deserve a chance to pursue their full measure of happiness." (万人は平等であり、万人は自由であり、万人は限度いっぱいの幸福を追求する機会に値する)
合衆国独立宣言(1776年)の理念を確認したくだりですが、政治的配慮から赤字部分は独立宣言とは違う表現にしてあります。何が違うのでしょうか?


A:合衆国独立宣言(1776年)では"all men are created equal"です。

(1) all men → allとすることで、男女差別表現を削除した。
(2) created(創造された)を削除し、無神論者に配慮した。


all are equal



オバマ氏は大統領選で多くの女性票を勝ち取りました。また、選挙運動中、無神論者の権利にも配慮することを明確にしました。

もし就任演説で原文どおりに"all men are created equal"と発言していたならば、大きな反発を受けていたことでしょう。
これらの点以外にも、就任演説では男女差別表現などを徹底的に排除してあります。


(1)
合衆国独立宣言(1776年)より:"We hold these truths to be self-evident, that all men are created equal, that they are endowed by their Creator(神) with certain unalienable Rights, that among these are Life, Liberty(自由) and the pursuit of Happiness(幸福の追求)."

このmenは男性のみならず女性も含む、と米国の学校では教えられてきました。辞書を引いてもそう書いてあります。しかし女性の権利に敏感になった現代では、多くの米国民はこの古い用法に違和感を持っています。

また、合衆国独立宣言を書いたFounding Fathers(建国の父たち)は、実際に女性のことは念頭になかったのに違いありません。もし女性を含めてmenと書いたのであれば、独立(1776年)とともに女性に参政権を与えたはずです。
また、menとは「大人の男性たち」。womenとは「大人の女性たち」のことです。

そこでオバマ演説では、「すべての人々」と言いたいときには、
単に all と書くか、
men and women and children
という表現を使っています。


定番表現であるFounding Fathers(建国の父たち)も使用を避け、オバマ演説では男女差のない
ancestors や forebears
としています。

My fellow citizens: I stand here today humbled by the task before us, grateful for the trust you've bestowed, mindful of the sacrifices borne by our ancestors. (私の仲間の市民たちよ。私は本日ここに、われわれの前にある課題によって謙虚にされ、あなた方が与えてくれている信頼に感謝し、われわれの祖先によって耐えられた犠牲に心一杯になって立っています。)

". . . we, the people, have remained faithful to the ideals of our forebears and true to our founding documents." (われわれ人民はわれわれの祖先の理想に忠実にあり続け、われわれの建国文書に忠実であり続けてきた)


(2)
また、就任演説で無神論者について言及したのも驚きでした。

We are a nation of Christians and Muslims, Jews and Hindus, and non-believers.(われわれはキリスト教徒とイスラム教徒、ユダヤ教徒とヒンドゥー教徒、そして非信仰者からなる国だ)


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伊藤サム(Sam Ito)
父親は米国サンフランシスコ生まれの日系二世。米国(高校)、英国(ロンドン大学)に留学。一橋大学在学中に英検1級で合格者総代。
ジャパンタイムズ在職中は、報道部にて外務省、大蔵省、首相官邸、自民党などを担当。週刊 ST 編集長、外信整理部長、編集局長などを歴任。その間、英 BBC などにコメンテーターとして出演、雑誌などへの寄稿も多数あり、多様なメディアにかかわるバイリンガル・ジャーナリストとして活躍。2009年NHK講座『ニュースで英会話』講師。
著書に『第一線の記者が教えるネイティブに通じる英語の書き方』『第一線の記者が教える英字新聞の読み方』『伊藤サムのこれであなたも英文記者』、解説・監修に『ニュースダイジェスト ビギナーズ』(以上、ジャパンタイムズ)など。
ウェブサイト「英語の世界」:http://homepage1.nifty.com/samito/